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抜く?抜かない?インプラントにする?前歯が折れたときの治療選択

2026/03/27

こんにちは、静岡市駿河区石田の小嶋デンタルクリニックです。

前歯が折れてしまい、「抜歯が必要」「インプラントを勧められたが高額で迷っている」と相談に来られる患者様は少なくありません。
特に両隣の歯が健全な場合、「削りたくない」という気持ちは非常に自然です。

今回のケース

実際に確認すると、前歯に水平破折を認めます。
この状態では、長期的な予後を考えると抜歯+インプラント治療が第一選択になるケースが多いのは事実です。
しかし、ここで一度立ち止まるべきです。
「本当に他の選択肢はないのか?」

歯を残す選択肢「エクストルージョン(挺出)」

今回検討できる治療の一つが
エクストルージョン(挺出)です。
これは矯正的な力(MTM)を使い、
歯根をゆっくり引き上げる方法です。

治療の流れ

* 破折した歯冠部を除去
* 歯肉より下に残った歯根を確認
* MTMで歯根を徐々に牽引
* 歯肉上に適切な位置まで出したところで補綴(差し歯)

ただし、重要なリスクがあります
この方法で見落としてはいけないのが
歯冠ー歯根長比(クラウンルートレシオ)です。
歯は本来、
* 見えている部分(歯冠)
* 支えている部分(歯根)
のバランスが極めて重要です。
エクストルージョンを行うと
歯根の実効的な長さが短くなるため、
* 噛んだときに揺れやすい
* 強い力で再破折のリスク
* 長期的な安定性の低下
といった問題が生じる可能性があります。

では、この治療はやるべきか?

ここが戦略的なポイントです。

短期的に「歯を残したい」なら
→ エクストルージョンは有効な選択肢

長期的な安定性を最優先するなら
→ 抜歯+インプラントが合理的

実はインプラント前提でも意味がある
重要なのはここです。
エクストルージョンは
将来インプラントを行う場合にもメリットがあります。

理由

* 骨が一緒に引き上がる(骨造成効果)
* 歯肉ラインを整えやすい
* 審美性が向上しやすい
逆に、何もせず抜歯すると
* 骨が不足しやすい
* 骨造成が必要になる
* 歯肉ラインが崩れる可能性
といった問題が出てきます。
つまり
「すぐインプラント」よりも一段階挟むことで有利になるケースがある
ということです。

適応の見極めがすべて

以下の場合はエクストルージョンは適応外です:
* 垂直破折がある場合
* 感染(病巣)が強い場合
* 虫歯が深く歯質が残らない場合
この見極めを誤ると、
時間もコストも無駄になります。

まとめ

前歯が折れた場合の選択肢は大きく3つです:
* 抜歯してインプラント
* エクストルージョンで歯を残す
* 将来インプラントを見据えた前処置としてのエクストルージョン
重要なのは
「今どうするか」ではなく「最終的にどうしたいか」です。

「できる限り自分の歯を残したい」
「最終的な見た目と機能を重視したい」
どちらも正しい選択です。
その間にある戦略的な治療を提案できるかどうかが、
治療の質を大きく左右します。


コジデン理事長ブログ(様々なことをゆる〜く書いています)

→ https://ameblo.jp/kojima-dental
インプラント専門サイトはこちら
→ https://ryu-implant.net

監修歯科医師

医療法人社団GRIT 理事長
小嶋デンタルクリニック 院長

小嶋 隆三Ryuzo KOJIMA

〔院長略歴〕


静岡市出身
鶴見大学歯学部卒 総合歯科
医療法人 麗歯会 加藤歯科医院 勤務
医療法人 UG会 多田歯科医院 勤務
医療法人 清明会 静岡リハビリテーション病院 非常勤 勤務
2013年 小嶋デンタルクリニック開設
2023年 医療法人社団GRIT 設立
2023年 コロンビア大学歯学部歯周病学分野所長兼准教授(1987-2015)、台北医科大学教授、学部長(2017-2023)ピーター・ワン先生の講座へ入局
2024年には、グローバルインプラントブランド「DIOインプラント」において、日本一の年間実績(症例数)を達成。
難症例や骨造成を伴うケースにも精通し、確かな診断力と精緻な技術で遠方からの患者も多く、信頼を集めている。

〔所属学会・所属団体〕


歯科医師臨床研修指導医
公益社団法人日本歯科先端技術研究所 インプラント認証医
BPS(精密義歯)クリニカル国際認定医
公益社団法人日本口腔インプラント学会
ISOI(国際口腔インプラント学会)
日本顎咬合学会
日本スポーツ歯科学会
日本抗加齢医学会
日本歯科医師会
静岡市歯科医師会 2020-2022 理事
静岡市介護認定審査委員