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歯周病は40代の女性で増える?手遅れになる段階と症状を解説
2023/06/08
歯周病は、日本人の成人の約8割がり患している身近な病気です。
初期段階では自覚症状がなく、治療が遅れると歯を失う可能性が高くなります。
加齢もリスク要因ですが、とくに女性はホルモン分泌との関連で歯周病になりやすいため注意が必要です。
40代以上の女性が気をつけたい歯周病の段階と症状をチェックしましょう。
歯周病とは
歯周病とは、歯を支える歯周組織が炎症を起こす病気です。
「プラーク」と呼ばれる細菌のかたまりが、歯の表面や歯と歯肉との間に沈着することで引き起こされます。
このプラークは白いカスのように見えますが、ケアが十分でないと歯石と呼ばれる状態に変化し歯ブラシで取りきることができなくなります。
放置すると歯と歯茎との間に歯周ポケットができ、そこに歯石やプラークがどんどんたまることによってさらにポケットが深くなる悪循環に陥り、症状が悪化。
歯ぐきの腫れや出血の症状がみられると中度、歯槽骨が溶けて歯を支えられなくなり歯がぐらつき始めると重度と判定され、最終的には歯が抜けてしまいます。
重度になると手遅れとなり、もう自分の歯を保存する治療はほとんどできません。
歯周病と女性ホルモンの関係
歯周病は、男性よりも女性のほうがり患しやすい病気です。
その原因は「女性ホルモン」にあります。
歯周病菌のなかには女性ホルモンを好み、ホルモンの影響で活動が活発化するタイプが存在しているためです。
女性ホルモンの分泌が大きく変化する時期、とくに思春期や妊娠、出産、更年期などに歯周病が進行する可能性が高くなります。
思春期は月経前後に歯ぐきが腫れやすくなる、妊娠・出産期はつわりで十分に歯が磨けなくなることもあり、症状が悪化するケースも少なくありません。
食欲がなくなると口の中の自浄作用も低下します。
また女性は男性にくらべて唾液量が少ない傾向にあり、口の中が酸性に傾きやすく歯周病リスクがアップすることもリスク要因のひとつです。
更年期を迎える40代半ば~50代半ばまで歯周病が増える
人間の体のなかでは、古い骨を壊して新しい骨をつくる「骨代謝」と呼ばれるサイクルが行われています。
ところが骨粗鬆症になるとこの骨代謝が正常におこなわれなくなり、骨がもろく折れやすくなります。
更年期をむかえる40代半ばから50代半ばにかけて女性ホルモンの分泌量が大きく減少すると骨の吸収を押さえる力も低下し、骨粗鬆症にかかる女性が増加するのです。
骨の組織が弱くなり骨がもろくなる骨粗鬆症は、歯を支える歯槽骨にも大きな影響を及ぼします。
歯槽骨が内部からもろくなると歯周病が進行しやすく、気がつくと重症化していることもあるのです。
もともと歯周病にり患していると歯槽骨そのものがもろくなっているため、病気の進行が早く、歯を失うリスクが高くなります。
歯が抜けるまでの歯周病の段階
歯周病はその進行度合いによって、ステージ1から4に分けられます。
ステージ1の段階ではほとんど自覚症状がないのですが、ステージが進むにつれて不快な症状があらわれ、最終的に歯を失ってしまいます。
ここではステージごとに、自覚症状や代表的な症状、歯を保存できるかどうかについて説明していますので、参考にしてください。
STAGE1 歯肉炎
ステージ1は「歯肉炎」の状態です。
歯と歯茎のすき間を「歯周ポケット」と呼びますが、健康な人はそのポケットが1〜2ミリ程度あいています。
歯磨きで歯垢(プラーク)をきちんと除去できないと歯垢がどんどん歯周ポケットに蓄積し、歯ぐきの炎症へとつながるのです。
歯肉炎の状態になると歯周ポケットは2〜3ミリまで広がり、歯ぐきが赤くなる・歯ぐきが腫れてぶよぶよしている・歯を磨くと時々出血するなどの症状がみられます。
ただ自覚症状がほとんどないため、歯科検診や虫歯の治療などで初めて歯肉炎になっていることを指摘されるケースも珍しくありません。
この段階なら歯ブラシや歯間ブラシで歯垢を取り除くことで症状の回復ができますし、歯の保存も十分可能です。
STAGE2 軽度歯周病
ステージ1の歯肉炎を放置すると、ステージ2の「軽度歯周病」へと進行します。
歯ぐきの炎症が悪化し、歯周病菌が歯周組織内へと侵入した状態です。
歯肉炎では歯ぐきの腫れでとどまっていたものが、この段階になると歯を支える歯槽骨や歯槽骨の内側にある歯根膜が溶けはじめ、歯周ポケットが約3〜5ミリ程度まで広がっています。
歯ぐきが赤く腫れ、歯磨きをすると出血する、歯ぐきに痛みを感じるなどの症状で、異常に気がつくこともあるでしょう。
歯槽骨が溶けはじめているため、歯のぐらつきを感じることもあるようです。
この段階では歯石を除去するスケーリングで治療ができますし、適切な対処をすれば症状は改善されます。
もちろん歯の保存にも問題はありません。
STAGE3 中等度歯周病
ステージ2の経度歯周病を放置すると、ステージ3の「中度歯周病」へと悪化します。
この状態になると歯ぐきの炎症はさらに進み、歯を支える歯槽骨もかなり破壊されています。
歯周ポケットも4〜7ミリまで大きく広がり、歯周ポケットにプラークや歯石が詰まった状態です。
こうなると歯磨きでプラークを除去することはできません。
歯槽骨が半分ほど溶けた状態なので歯ぐきも痩せており「歯の間に食べ物が詰まりやすくなる・歯がしみる・歯が長くなったと感じる・口臭がきつい・膿がでる」などの症状がみられます。
クリニックで歯石を除去し、必要であれば手術や再生医療なども行われるでしょう。
重度の一歩手前の状態のため、放置すると歯が保存できないリスクが高まります。
STAGE4 重度歯周病
歯周病もステージ4になると「重度歯周病」と呼ばれ、歯を失うリスクがかなり大きくなります。
歯周ポケットは6ミリ以上に深く成長し、歯槽骨や歯肉が溶けているため歯のぐらつきがかなり大きくなり、食べ物をしっかり噛むことが困難になります。
歯ぐきは真っ赤に腫れあがり、膿が出て口臭もかなりひどくなります。
この状態になっても放置すると歯が脱落し、歯を保存することはできません。
またたとえ歯が抜けていなくても、ほかの歯を守るために抜歯しなければならないこともあります。
「歯が抜けたらインプラントや入れ歯にすればいい」と考える方もいるようですが、天然歯を失うことは大きな損失です。
できるだけ早い段階で治療することが重要となります。
歯周病の手遅れの段階は?
歯周病が手遅れの段階になる段階は、やはり歯を失うリスクがもっとも高くなるステージ4の「重度歯周病」でしょう。
軽度や中程度であればプラークや歯石の除去、歯周組織再生療法などの治療で、歯の喪失を防ぐことができます。
しかし、ステージ4になると歯を支える歯槽骨が半分以上溶け、歯ぐきも真っ赤に(または真っ黒に)炎症し、歯が大きくぐらついています。
こうなると末期状態、歯が抜けるのは時間の問題です。
一度抜けた天然歯をもとの場所に戻すことは不可能ですし、歯周病は自然に治癒する病気ではありません。
そのため、病気の早期発見・早期治療がとても大切になります。
日本人が歯を失う一番の原因は「歯周病」で全体の約40%を占めています。
もし適切な歯周病対策を行えば、自分の歯を失うという手遅れの段階にならずにすむのです。
歯を失うリスク
もしも歯周病で自分の歯を失ってしまったら、どのようなリスクが考えられるのでしょうか。
まず歯を失うと隣の歯が空いたスペースに接近するように移動し、全体の歯並びが悪くなります。
また歯が抜けることで口の中の空気が漏れやすくなり、うまく発音できなくなることもあるでしょう。
言葉がしゃべりにくくなると人とのコミュニケーションが取りづらくなり、会話が減るリスクがあります。
ほかにも食べ物をしっかり噛めないことで脳への刺激が低下し、認知症発症危険度が上がるという研究も発表されています。
そのため、やわらかいものばかりを食べることで摂取できる栄養素が偏るリスクもあります。
しっかり噛めないと満腹中枢が刺激されないことで過食につながる恐れもあり、肥満リスクもアップするのです。
歯周病の症状
歯周病になるとさまざまな症状が出てきます。
軽度のうちは自覚症状がなく、大きな変化を感じることはありません。
ところが症状が悪化するにつれて「口臭がひどい、歯ぐきが露出してきた(歯が長くなった)、歯がしみる」など複数の症状がみられます。
以下のような症状を感じたら歯肉炎になっているかどうかの判定も含めて、歯科医院で診察してもらいましょう。
口腔内の症状
歯周病菌に侵された歯肉や歯槽骨では、体内に細菌を入れないために免疫細胞が細菌と戦っています。
その死骸が膿となって排出されるため、歯周病が進行すると歯ぐきから膿がでるのです。
この膿が口臭の原因になりますし、歯ぐきからの出血も口臭の原因のひとつになります。
また口のなかの粘つきは、歯周病菌が増殖していることが考えられます。
細菌が繁殖すると粘り気のある物質を分泌するため、口の中が粘つくときは口腔内にたくさんの細菌が存在している可能性が高くなります。
ほかにもドライマウスやストレスなども、口腔内の粘つきに関係しています。
歯肉の症状
歯周病が悪化すると、歯磨きでの出血や歯肉の腫れ、歯肉の位置が下がり歯が長く見えるなどの症状がでます。
健康な歯肉は薄いピンク色で歯ぐきが締まっており、ブラッシング程度の刺激では出血しません。
ところが歯周病菌が口腔内で繁殖すると歯肉に炎症が起き、歯ぐきをチェックすると赤く腫れている、歯ぐきに痛みを感じることで異常に気づくケースもあるようです。
歯肉が丸みを帯びて膨らんでいる、歯肉が赤紫色に変色している、歯磨きで出血する以外にも膿が出始めるなどの症状があらわれると、歯周病はかなり進行しています。
一刻も早い治療が必要です。
歯の症状について
歯の症状からも歯周病の進行度合いがわかります。
軽度な歯周病であれば、歯周ポケットがやや深くなる程度で自覚症状はありませんが、病気が進行すると以下のように歯に異常が生じる場合があります。
- 歯と歯の間に食べ物がはさまりやすい
- 歯が浮いたような感じがする
- 歯並びが変わったような気がする
- 歯が揺れているような気がする
歯を支える歯槽骨が溶けることで、歯ぐきの歯周ポケットが広がることで歯と歯の間にすき間が生まれます。
そして、すき間に食べ物がはさまりやすくなることも、歯槽骨の破壊により歯が揺れる、歯が浮いた感じがするなど、不快な症状も発生してしまうのです。
歯ぐきの後退で歯が長く見えるのも危険信号です。
歯周病を予防する方法
歯周病は早期発見・早期治療で適切な治療を受ければ症状の改善が見込めます。
症状が悪化すると歯科医院での専門的な治療が必要です。
初期の段階であれば歯磨きやデンタルフロス、洗口剤などによる口腔内の清掃(プラークコントロール)で症状の改善が期待できます。
プラークコントロール以外の歯周病予防対策もご紹介します。
日常の歯みがき
歯周病の原因は歯周病菌のかたまり(プラーク)です。
そのため歯肉炎対策に対応した歯磨き粉を使い、プラークをしっかり除去することが重要になります。
歯磨きは1日2〜3回の頻度で、1回あたり最低でも2分間はブラッシングするのが理想です。
デンタルフロスや歯間ブラシで歯と歯の間に詰まった食べかすを取りさる、マウスウォッシュで口腔内を清潔にするなどの対応も有効です。
プラークを蓄積させないように、歯の表面だけではなく歯と歯ぐきの間も丁寧にブラッシングするのがコツです。
このとき歯ブラシを力任せに動かすと歯ぐきが痛むため、軽い力で歯ブラシを動かしましょう。
定期的な歯石除去
毎日の歯磨きでも除去できないプラークは、放置すると歯石と呼ばれる状態へと変化します。
歯石はプラークが石灰化したもので表面がザラザラしており、歯ブラシで簡単に除去できません。
歯石を放置していると表面にプラークが蓄積しやすくなり、そこから歯肉炎が悪化する可能性があります。
定期的に歯科医院に通い、歯周ポケットに付着した歯石を専用の器具で取り除いてもらうのがベストな選択です。
スケーリング・ルートプレーニングと呼ばれる方法であれば、歯磨きでは取れない歯石を取りのぞくことができます。
歯周ポケットが深い場合は、数回に分けて施術します。
生活習慣の改善
生活習慣が歯周病の発生や進行に関連しているという指摘があります。
たとえば喫煙習慣のある方は、たばこに含まれる有害物質が口腔内の粘膜や歯肉をとおして吸収され、歯周病を悪化させるリスク要因になっています。
ストレスや疲れは免疫力を低下させることから万病の元といわれていますが、歯周病を悪化させるリスクもアップ。
甘いものが好きで間食の多い方も要注意です。
歯周病菌は糖分を好み、糖分を栄養にかえて繁殖していきます。
間食が多いと食べかすがたまりやすく歯周病リスクも急上昇。
食事の時間を決め、食後にきちんと歯磨きをすることが大切です。
まとめ
歯周病は、早期発見・早期治療で重症化を防げます。
小嶋デンタルクリニックなら歯周病の進行状態にあわせて、歯磨き指導や目に見える歯石の除去、かみ合わせ調整などの治療が可能です。
中程度以上の方にはより専門的な歯周外科治療(フラップ手術)、歯周組織再生療法(エムドゲイン)を施し、大事な歯を守ります。
まずはお気軽にご相談ください。