ブログ
「まだ生えていない親知らず」を抜くという判断──歯胚抜歯について
2026/07/17
こんにちは、静岡市駿河区の小嶋デンタルクリニックです。
先日、中学生のお子さまを連れた保護者の方から、こんなご相談をいただきました。
「矯正の先生に、親知らずの芽のうちに抜いておいたほうがいいと言われました。生えてもいない歯を抜くなんて、必要なんでしょうか?」
もっともな疑問だと思います。痛くもない、見えてもいない歯を、わざわざ外科処置で取り除く。説明を受けても、直感的には納得しにくい処置です。
今回は、この「歯胚抜歯(しはいばっし)」について、やるか・やらないかではなくいつやるかという時間軸の問題として整理してみます。
歯胚とは、親知らずの「工事中」の状態
歯は、ある日突然できあがるわけではありません。顎の骨の中で数年かけて形づくられ、根が伸び、その力で少しずつ押し出されるように生えてきます。
この、まだ根が完成していない発育途中の状態を歯胚と呼びます。下の親知らず(第三大臼歯)の場合、10代前半〜半ばがちょうどこの段階にあたることが多く、レントゲンやCTには「丸い冠だけがぽつんと写っている」ように見えます。
歯胚抜歯とは、この根が伸びきる前の段階で摘出してしまう処置のことです。

なぜ「時期」が決定的なのか
ここが本質です。親知らずの抜歯は、待てば待つほど難しくなるという性質を持っています。
理由は3つあります。
1. 根が伸びる
根が完成すると、骨の中でしっかり固定されます。抜くために削る骨の量が増え、処置時間も長くなります。
2. 根が神経に近づく
下顎には下歯槽神経という太い神経が走っています。歯胚の段階ではこの神経から離れた浅い位置にありますが、根が伸びるにつれて距離が縮まり、場合によっては接触します。神経損傷リスクは、この距離に大きく左右されます。
3. 治る力が落ちる
10代の骨の回復力は、30代・40代とは比較になりません。同じ処置でも、術後の腫れ方も、骨の戻り方も違います。
つまり歯胚抜歯とは、将来必ず払うことになるコストを、いちばん安い時期に前払いしておくという発想の処置です。20代後半で「痛くなったから抜く」場合と比べ、身体的な負担は明らかに軽く済みます。
矯正治療にとっての意味
矯正の先生からご紹介いただくケースでは、これに加えて治療上の理由があります。
親知らずは、後ろから前の歯を押す力を持っています。せっかく整えた歯並びが、数年かけて少しずつ崩れていく「後戻り」の一因になり得ます。また、奥歯を後方へ動かす治療計画では、親知らずがその通り道を塞いでいることもあります。
矯正は数年がかりの投資です。その結果を長持ちさせるために、押す力を先に取り除いておく——という判断になります。
それでも、慎重であるべき理由
一方で、正直にお伝えすべき点もあります。
歯胚抜歯は、今なんの症状もない歯に手を入れる処置です。「将来必ずトラブルになる」と断言できるわけではありません。まっすぐ生えてきて、問題なく機能する親知らずも存在します。
また、歯胚の位置が深い場合には、かえって削る骨が多くなることもあります。外科処置である以上、腫れ・痛み・出血・感染のリスクもゼロではありません。
ですから当院では、画像診断で「生えてくる見込み」「向き」「深さ」「神経との位置関係」を確認し、抜くことの利益が明確に上回る場合にのみお勧めしています。「念のため全部抜きましょう」という提案はしません。
費用について(保険と自費の線引き)
ここは誤解が多いところです。
親知らずの抜歯は、智歯周囲炎やむし歯など病気に対する治療であれば保険が適用されます。しかし、症状のない歯を矯正治療の都合で抜く場合(便宜抜歯)は、自費診療となります。
矯正治療そのものが原則自費であり、その目的で行う抜歯も同じ扱いになる、という保険制度上のルールによるものです。歯胚抜歯の多くはこちらに該当します。
費用は診査・診断のうえで個別にご案内しますので、まずはご相談ください。
当院での対応
小嶋デンタルクリニックでは、歯胚抜歯も対応しております。
気になる方はご相談ください。
コジデン理事長ブログ(様々なことをゆる〜く書いています)
→ https://ameblo.jp/kojima-dental
インプラント専門サイトはこちら
→ https://ryu-implant.net
監修歯科医師
-
医療法人社団GRIT 理事長
小嶋デンタルクリニック 院長
小嶋 隆三Ryuzo KOJIMA〔院長略歴〕
静岡市出身
鶴見大学歯学部卒 総合歯科
医療法人 麗歯会 加藤歯科医院 勤務
医療法人 UG会 多田歯科医院 勤務
医療法人 清明会 静岡リハビリテーション病院 非常勤 勤務
2013年 小嶋デンタルクリニック開設
2023年 医療法人社団GRIT 設立
2023年 コロンビア大学歯学部歯周病学分野所長兼准教授(1987-2015)、台北医科大学教授、学部長(2017-2023)ピーター・ワン先生の講座へ入局
2024年には、グローバルインプラントブランド「DIOインプラント」において、日本一の年間実績(症例数)を達成。
難症例や骨造成を伴うケースにも精通し、確かな診断力と精緻な技術で遠方からの患者も多く、信頼を集めている。
〔所属学会・所属団体〕
歯科医師臨床研修指導医
公益社団法人日本歯科先端技術研究所 インプラント認証医
BPS(精密義歯)クリニカル国際認定医
公益社団法人日本口腔インプラント学会
ISOI(国際口腔インプラント学会)
日本顎咬合学会
日本スポーツ歯科学会
日本抗加齢医学会
日本歯科医師会
静岡市歯科医師会 2020-2022 理事
静岡市介護認定審査委員 


054-654-1020
Web予約