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顎関節症のマウスピースは「作れば治る」ものではありません ― スプリント治療の本当の役割と限界

2026/07/10

こんにちは、静岡市駿河区の小嶋デンタルクリニックです。

「顎が痛くて調べたら、マウスピースが良いと出てきた」 「市販のマウスピースを買って使っているが、なかなか良くならない」
最近、こうしたご相談が増えています。 顎関節症とマウスピース(専門的にはスプリントと呼びます)。この2つはセットのように語られがちですが、「作れば治る」という理解は、実は正確ではありません。今日は、スプリントが何のための装置なのかを整理してお伝えします。


まず、ガイドラインでの位置づけから

2023年に改訂された日本顎関節学会の診療ガイドラインでは、顎関節症の初期治療(保存的・可逆的な治療)として、自己開口訓練とスタビリゼーションスプリントが「弱い推奨」とされています。しかもエビデンスの確実性は「非常に低い」と明記されています。
「弱い推奨」とは、やってもよいが、必ずしも全員に必要とは言い切れないという位置づけです。つまり、スプリントを入れれば劇的に治る、というほど強い根拠は、今のところ示されていません。
では効果がないのかというと、決してそうではありません。目的と使い方が合っていれば、スプリントは非常に有効な”道具”になります。大切なのは、その目的を取り違えないことです。

スプリントの役割は、大きく3つ

役割①:顎への負担を逃がす緩衝材として
食いしばりや歯ぎしりで、顎関節や咀嚼筋には想像以上の力がかかっています。スプリントを一枚挟むことで、その力を分散し、関節や筋肉を一時的に休ませることができます。捻挫した関節を固定して休ませるのに近いイメージです。

役割②:顎の位置(顎位)を安定させる土台として
噛み合わせが不安定だと、下顎は無意識のうちに噛みやすい場所を探し続け、その分だけ関節と筋肉が疲れていきます。均等に接触するよう調整したスプリントを入れることで、顎位が落ち着き、負担が軽くなるケースがあります。矯正治療のあとに「どこで噛めばいいか分からない」と感じている方に、特に当てはまることがあります。

役割③:食いしばり(TCH)に気づくためのセンサーとして
本来、上下の歯は食事と会話以外では触れていません。ところが、日中ずっと軽く歯を接触させ続けている方(TCH:歯列接触癖)が非常に多く、しかもご本人はまず気づいていません。
スプリントを入れると、「あ、今また噛んでいた」と気づきやすくなります。装置が、自分の癖を教えてくれるわけです。私たちは、この気づきこそが治療の本体だと考えています。癖に気づけて初めて、それを減らせるからです。

逆に、やってはいけないこともあります

顎関節症の治療でとりわけ注意したいのは、いきなり歯を削って噛み合わせを作り変えるような、元に戻せない(不可逆的な)処置です。
同じ2023年のガイドラインでは、こうした咬合調整を行わないことが「強い推奨」とされています。実際に、咬合調整によって不調を抱えることになった患者さんが存在することが、その根拠として挙げられています。
スプリントの大きな利点は、まさにこの逆で、外せば元に戻せる(可逆的)という点にあります。だからこそ、「まず可逆的なスプリントで様子を見て、削るような不可逆的な処置は安易に行わない」という順番に、大きな意味があるのです。

装置より先に、診断があります

顎関節症は一つの病気ではなく、いくつもの原因が重なって起こる”症候群”です。
* 筋肉が主な原因なのか
* 関節そのものに問題があるのか
* 噛み合わせが影響しているのか
* 食いしばりの習慣(TCH)があるのか
これを見極めないまま「とりあえずマウスピース」を作っても、遠回りになりかねません。同じ装置でも、原因の診断があって初めて、本来の効果を発揮します。
当院ではCTによる関節の評価、噛み合わせの診査、生活習慣の確認まで行ったうえで、院内技工所で一人ひとりに合わせたスプリントを製作しています。
「マウスピースを使っているのに良くならない」 「矯正のあとから顎の調子がおかしい」
そうしたお悩みがあれば、まずは原因を一度きちんと調べてみることをおすすめします。


コジデン理事長ブログ(様々なことをゆる〜く書いています)

https://ameblo.jp/kojima-dental
インプラント専門サイトはこちら
https://ryu-implant.net

監修歯科医師

医療法人社団GRIT 理事長
小嶋デンタルクリニック 院長

小嶋 隆三Ryuzo KOJIMA

〔院長略歴〕


静岡市出身
鶴見大学歯学部卒 総合歯科
医療法人 麗歯会 加藤歯科医院 勤務
医療法人 UG会 多田歯科医院 勤務
医療法人 清明会 静岡リハビリテーション病院 非常勤 勤務
2013年 小嶋デンタルクリニック開設
2023年 医療法人社団GRIT 設立
2023年 コロンビア大学歯学部歯周病学分野所長兼准教授(1987-2015)、台北医科大学教授、学部長(2017-2023)ピーター・ワン先生の講座へ入局
2024年には、グローバルインプラントブランド「DIOインプラント」において、日本一の年間実績(症例数)を達成。
難症例や骨造成を伴うケースにも精通し、確かな診断力と精緻な技術で遠方からの患者も多く、信頼を集めている。

〔所属学会・所属団体〕


歯科医師臨床研修指導医
公益社団法人日本歯科先端技術研究所 インプラント認証医
BPS(精密義歯)クリニカル国際認定医
公益社団法人日本口腔インプラント学会
ISOI(国際口腔インプラント学会)
日本顎咬合学会
日本スポーツ歯科学会
日本抗加齢医学会
日本歯科医師会
静岡市歯科医師会 2020-2022 理事
静岡市介護認定審査委員