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上顎前歯部に発見された「歯原性角化嚢胞」―再発に注意が必要な顎骨嚢胞とは?

2025/10/31

こんにちは、静岡市駿河区石田の小嶋デンタルクリニックです。

今回は、上顎の前歯部に発見された顎骨嚢胞(がっこつのうほう)についてご紹介します。
患者様は「上の前歯のあたりが腫れてきた」との主訴で来院されました。
レントゲン撮影を行うと、3本の歯根にまたがるような透過像(黒い影)が確認されました。

病態の概要:歯原性角化嚢胞

顎骨内に発生する嚢胞の中でも、「歯原性角化嚢胞」はやや特殊な存在です。
歯の発生に関係する歯原上皮から発生し、内部には角化した上皮細胞を伴うのが特徴です。
一般的な歯根嚢胞と比べると、
* 骨内で広がりやすい(浸潤傾向がある)
* 再発しやすい(再発率20〜30%)
* エナメル上皮腫(良性腫瘍)と類似する像を示す
といった特徴があります。

鑑別診断:歯根嚢胞・エナメル上皮腫との違い

レントゲン上では歯根嚢胞や腫瘍との区別が難しいことがあります。
今回のケースでも、3本のうち1本の歯が失活しており、当初は歯根嚢胞の可能性も考えられました。

疾患名 原因 境界の特徴 再発傾向 備考
歯根嚢胞 根尖部の慢性炎症 明瞭で均一 低い 根管治療で改善可
歯原性角化嚢胞 歯原上皮の増殖 不均一、波状 高い 病理診断で確定
エナメル上皮腫 歯原上皮由来(腫瘍) 多房性 高い 腫瘍的性質をもつ

治療経過と病理診断

根管治療で感染源を除去したのち、外科的に嚢胞を摘出しました。
摘出物を病理検査に提出したところ、歯原性角化嚢胞と診断されました。
嚢胞壁は薄く剥がれやすく、取り残しが再発の原因となるため、外科的には嚢胞壁を完全に除去することが重要です。
また、再発を防ぐために、経過観察として半年〜1年ごとのレントゲン・CT検査を推奨します。

まとめ:早期発見と病理検査の重要性

歯原性角化嚢胞は痛みが少なく静かに進行することも多く、
「違和感がある」「歯ぐきが少し腫れている」といった軽微な症状でも、レントゲンで大きく進展しているケースがあります。歯ぐきや顎の腫れを感じたら、早めの受診をおすすめします。そして、嚢胞を摘出した際には、必ず病理検査を行うことが再発予防の第一歩です。

コジデン理事長ブログ(様々なことをゆる〜く書いています)

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監修歯科医師

医療法人社団GRIT 理事長
小嶋デンタルクリニック 院長

小嶋 隆三Ryuzo KOJIMA

〔院長略歴〕


静岡市出身
鶴見大学歯学部卒 総合歯科
医療法人 麗歯会 加藤歯科医院 勤務
医療法人 UG会 多田歯科医院 勤務
医療法人 清明会 静岡リハビリテーション病院 非常勤 勤務
2013年 小嶋デンタルクリニック開設
2023年 医療法人社団GRIT 設立
2023年 コロンビア大学歯学部歯周病学分野所長兼准教授(1987-2015)、台北医科大学教授、学部長(2017-2023)ピーター・ワン先生の講座へ入局
2024年には、グローバルインプラントブランド「DIOインプラント」において、日本一の年間実績(症例数)を達成。
難症例や骨造成を伴うケースにも精通し、確かな診断力と精緻な技術で遠方からの患者も多く、信頼を集めている。

〔所属学会・所属団体〕


歯科医師臨床研修指導医
公益社団法人日本歯科先端技術研究所 インプラント認証医
BPS(精密義歯)クリニカル国際認定医
公益社団法人日本口腔インプラント学会
ISOI(国際口腔インプラント学会)
日本顎咬合学会
日本スポーツ歯科学会
日本抗加齢医学会
日本歯科医師会
静岡市歯科医師会 2020-2022 理事
静岡市介護認定審査委員