【症例紹介】上顎洞とインプラント治療｜サイナスリフトによる骨造成

2025/07/23

こんにちは、静岡市駿河区にある歯科医院、小嶋デンタルクリニックです。
当院では日々、インプラント治療に取り組んでいますが、最近は患者様の状態が多様化・複雑化しており、より高度な知識と技術が求められるケースが増えています。
 
インプラント治療が複雑化している理由
インプラントのシステム自体は進化し、シンプルで使いやすくなってきています。
しかし、「できるだけ歯を残す」という方針のもと、機能していない歯をギリギリまで残すケースが増えており、その結果として骨の状態が悪化してからの抜歯・インプラント治療となることが少なくありません。
感染源が長く放置されることで、骨が吸収され、抜歯後も骨造成が必要になるというのが近年のインプラント治療のトレンドでもあります。
歯を残すこととインプラント治療、二つの理想の間でインプラント医は日々ジレンマを感じながら、それでも技術で応えようと努力を重ねています。
 
今回のケース：右上奥歯のインプラント治療
今回ご紹介するのは、右上の臼歯部（奥歯）にインプラント治療を希望された患者様の症例です。
事前のレントゲンでは、埋入予定の部位に十分な骨が存在せず、上顎洞（じょうがくどう）に近接している状態であることが確認されました。
 

（術前レントゲン）
 

（骨の高さ）
 

（インプラント予定位置）
 
このままでは、インプラントが上顎洞を突き抜けてしまうリスクがあるため、安全にインプラントを行うには「サイナスリフト（上顎洞挙上術）」と呼ばれる骨造成が必要です。
 
サイナスリフトとは？
サイナスリフトは、上顎洞（副鼻腔）と歯槽骨の間に人工骨などを補填して新たに骨を作る治療法です。
英語では「Maxillary Sinus Lift」とも呼ばれます。
この処置には2つのアプローチがあります：
①ラテラルアプローチ（側方アプローチ）
側面から上顎洞にアプローチし、複数のインプラントや形態が複雑な場合に用います。
骨窓を開け、上顎洞膜を持ち上げて人工骨を補填します。
②クレスタルアプローチ（垂直アプローチ）
インプラント埋入用のホールから直接、上顎洞を垂直に挙上する方法です。
比較的侵襲が小さく、既存骨が一定量（3〜5mm程度）あれば適応可能です。
 
今回は、②クレスタルアプローチを採用しました。
 

（埋入直後のレントゲン）
 
術前と比べて、上顎洞の膜がしっかり挙上されているのがわかります。
この患者様は、既存の歯槽骨が約3mmあったため、同時埋入が可能でした。
インプラントの初期固定も良好で、サイナスリフトによって形成された部分の骨が安定してから、最終的な補綴（被せ物）へと移行していきます。
 
抜歯部の処置と今後の経過
今回のケースでは、インプラント埋入部位に隣接して、まだ完全に治癒していない抜歯窩が存在していたため、ホール形成を工夫し、骨造成を行いました。
抜歯窩には骨補填材を充填し、縫合を行って終了しました。
 
複雑なケースにも対応できる体制を整えています
年々、インプラント治療は「ただ埋める」だけではなく、「骨を作ってから埋める」という治療へとシフトしています。
もちろんシンプルなケースも多くありますが、今回のような複雑な症例にも対応できる経験と技術が、現代の歯科医院には求められています。
小嶋デンタルクリニックでは、高度なインプラント治療にも対応できる体制を整え、日々研鑽を積んでおります。
お口のことで気になることがありましたら、どうぞお気軽にご相談ください。
 
 
 
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