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もう手遅れ?歯周病の症状6つ│治療法・進行段階・進行を止める方法を解説
2024/05/24
歯周病(歯槽膿漏)は自覚症状なしに静かに進行し、症状が現れたときにはもう手遅れになってしまっていたというケースもあります。
しかし、手遅れに思われても適切な治療をすることで、なんとか歯を残せる可能性はゼロではありません。
この記事では、歯周病が手遅れで抜歯の可能性が高い症状や、歯周病はいつから手遅れになるのか、重度歯周病の治療法などについて詳しく解説します。
治療が遅れると手遅れになってしまう可能性もあるため、歯周病になってしまったからといって諦めず、状態に合った治療を行っていきましょう。
そもそも歯周病になったら手遅れ?治らない?
「そもそも歯周病になったら手遅れ、治らない」と聞いたことがある方もいるかもしれません。
昔は歯周病は老化に伴う病気だと考えられており、このことから「治らない」といわれることもありました。
しかし、現在では適切な治療を行うことで、歯周病の進行を防ぎ、健康な状態を維持できることが明らかになっています。
ただし、歯周病が重症化したことで痩せた歯茎や、溶けてしまった顎の骨を元通りすることはできません。歯周病の予防や治療はできるものの、失った歯周組織は戻ってこないため、歯周病を悪化させないことが重要です。
歯周病になった時点で手遅れというのは間違いで、適切な治療を行えば治すことができます。歯や歯茎の健康をこれからも長く維持していくためにも、早めに歯科医院で歯周病治療を始めましょう。
歯周病が手遅れで抜歯の可能性が高い6つの症状
以下のような症状がある場合、手遅れで抜歯の可能性が高いと考えられるでしょう。
- 噛むときに歯が動いて力が入らない
- 歯並びがバラバラになってきた
- 噛むと痛い
- 歯茎から膿が出ている
- 口臭がひどくなった
- その他の症状
ここからは、それぞれの症状について詳しく解説していきます。
噛むときに歯が動いて力が入らない
食事中に食べ物を噛んだとき、歯が動いてしまってうまく噛めない、力が入らない方は、歯周病がかなり進行しています。
歯がグラグラと前後左右に動くだけでなく、上下に動く場合は、歯の下の骨がなくなってしまっている可能性が高いでしょう。
歯茎とくっついていることでなんとか抜けずに歯が支えられている状態です。
レントゲンを撮れば骨や歯がどんな状態になっているかわかるため、歯科医院で検査を受けましょう。
歯並びがバラバラになってきた
歯周病が進行すると顎の骨が溶かされて噛む力を支えきれなくなり、歯が動いて歯並びがバラバラになります。
放置すると噛むたびに顎の骨が減少していくため、早急な治療が必要です。
早めに治療を始めればまだ歯を残せる可能性もあるため、すぐに歯科医院を受診しましょう。
噛むと痛い
虫歯ではないのに歯が痛い場合、歯周病が原因で痛みが出ている可能性があります。
歯周病自体に痛みはほとんどないものの、歯周病が進行することで骨の吸収が進み、歯を支える力が弱くなると、食べ物を噛んだときに痛みを感じます。
見た目や痛み方、痛みの強さなどで虫歯や歯周病かを判断することは難しいため、詳しい原因を調べて適切な治療を行う必要があります。
歯茎から膿が出ている
歯周病によって歯茎から膿が出ている場合も、要注意です。
歯周病が進行し顎の骨が溶かされると歯周ポケット(歯と歯茎の境目にある溝)が深くなっていきます。
歯周ポケットが深くなると汚れが溜まりやすくなり、歯周病菌が繁殖して歯茎の腫れや炎症が起こり、膿が漏れ出てきます。
膿が出るのは歯周病が進行している証拠であり、歯周ポケットが深くなればなるほど歯を残すのが難しくなるため注意しましょう。
口臭がひどくなった
口臭がひどくなった場合、歯周病が進行したことで歯周ポケットがかなり深くなってしまっている可能性があるでしょう。
歯周ポケットが深くなると、歯垢や歯石、食べカスなどの汚れが溜まりやすくなります。
歯周病菌がこれらのタンパク質を代謝する際、口臭の原因になるメチルメルカプタンや硫化水素を発生させることで、独特の不快な口臭が起こります。
歯茎から膿が出ていた場合、膿が発する臭いと混ざってさらに強い臭いになるでしょう。
その他の症状
上記のような症状のほか、以下のような症状も放置すれば手遅れになる可能性があります。
- 歯茎が腫れている、体調が悪くなると大きく腫れる
- 歯茎を押すと膿が出てくる
- 歯磨きをすると必ず出血する など
自分では「もう手遅れ」と思い込んでいても、すぐに歯科医院で適切な治療を受ければまだまだ残せる歯があるかもしれません。
歯を失うことになって後悔しないためにも、まずは相談だけでもしてみましょう。
手遅れになるのはいつから?歯周病の4段階と症状
歯周病の進行段階は大きく4つのステージに分けられます。手遅れで抜歯の必要があるとされることが多いのは、ステージ4の重度歯周病の段階です。
しかし、それ以外のステージだからといって放置すれば進行し、歯を失う原因になります。放置せず、これ以上ひどくなる前に早めに治療を始めましょう。
- ステージ1:歯肉炎
- ステージ2:軽度歯周病
- ステージ3:中等度歯周病
- ステージ4:重度歯周病
ここからは、上記4つの段階別に症状を詳しく解説します。
ステージ1:歯肉炎
ステージ1の歯周病は歯肉炎と呼ばれ、少し歯茎に炎症が見られる状態です。
歯茎自体は薄いピンク色をしており、弾力もあって引き締まっていますが、歯磨きをしたときにたまに出血が見られたり、歯茎が赤く腫れることがあります。
歯肉炎の段階では目立った自覚症状がほとんどなく、歯科検診で歯肉炎を指摘されて初めて気づくケースが多いです。
歯周ポケットは健康な状態では1〜2mmですが、歯肉炎になると2〜3mmまで広がります。
ステージ2:軽度歯周病
ステージ2まで進行すると軽度歯周病となり、歯槽骨が溶け始めることで歯周ポケットは3〜5mmまで広がります。
この段階になると、歯磨きでの出血のほか、歯茎の痛み、歯が浮いたような感じ、かゆみや違和感などの自覚症状を感じるケースが多いです。
歯磨きがしっかりできていないと悪化して歯周ポケットがどんどん深くなっていってしまうため、歯科医院で歯石を除去するスケーリングを受け、正しい歯磨きの方法のアドバイスをもらうといいでしょう。
ステージ3:中等度歯周病
軽度歯周病を放置すると悪化して、ステージ3の中等度歯周病にまで進行します。
中等度歯周病になると歯周ポケットは4〜7mmとかなり深くなり、詰まった歯垢や歯石、食べカスを自分で除去することができなくなってしまいます。
歯槽骨もかなり破壊されてしまい、歯茎の痛みや腫れ、出血、膿、口臭が生じます。
また、冷たいものがしみる、歯茎が痩せたことで食べ物が詰まりやすくなる、歯が長くなってくるなどの症状が出ることもあるでしょう。
ステージ4:重度歯周病
重度歯周病まで進行すると、いわゆる「手遅れ」に近い状態になり、歯を失うリスクは高くなります。
歯槽骨の破壊がかなり進み、歯周ポケットも8mm以上と深い状態です。
歯茎がブヨブヨとして膿や出血が起こり、歯が大きくぐらついてしっかり噛めなくなります。
歯を失った場合の補綴(ほてつ)治療としてはインプラントや入れ歯といった方法がありますが、歯が多く溶けてしまうとインプラントや入れ歯治療が難しくなることもあります。
また、どんなに優れた補綴治療であったとしても、天然の歯に勝るものはありません。歯を失うことにならないよう、重度歯周病まで悪化する前に治療を開始しましょう。
重度歯周病の治療法
重度歯周病の治療法は、以下の通りです。
- 歯周基本治療
- フルマウスディスインフェクション(FMD)
- 歯周組織再生療法
- 歯周外科治療
- 歯周補綴治療
- 抜歯
ここからは、それぞれの治療法について詳しく解説します。
歯周基本治療
歯周基本治療は名前の通り、歯周病を治療する基本となるものです。歯周病の原因・リスクを取り除き、歯周病が進行しにくい環境に整えます。
歯周基本治療では、主に以下のような治療が行われます。
- 痛み止めや抗菌剤の使用(痛みや腫れがある場合の応急処置)
- スケーリング・ルートプレーニング
- プラークコントロール
- 合っていない修復物・補綴物のやり直し
- 口腔習癖(かみ合わせに影響する悪い癖)の改善
- かみ合わせの調整
- 保存不可能な歯の抜歯 など
上記のような歯周基本治療を行っても改善が難しい場合には、歯茎の手術(歯周外科治療)を行う場合もあります。
フルマウスディスインフェクション(FMD)
フルマウスディスインフェクション(FMD/Full Mouth Disinfection)とは、「歯垢・歯石を除去する物理的な細菌除去」と「抗生物質の内服や抗菌薬の局所投与など薬剤を使った細菌除去」を組み合わせた歯周病原菌除去のための治療法です。
中等度〜重度の歯周病や、外科治療をなるべく避けたい場合に適用されます。
フルマウスディスインフェクションは保険が適用されず、治療する歯の本数によって金額が変わってきます。
歯周組織再生療法
歯周組織再生療法は、歯周病によって失われたさまざまな歯周組織(歯根膜・歯槽骨・セメント質・歯茎)を再生させるために行われる治療です。
エムドゲイン、バイオガイド、リグロス、サイトランスグラニュール、サイトランスエラシールドといった薬剤を使用して歯周組織の再生を促します。
患者さん自身の口の中から採取した骨や血液を移植する方法もあります。
歯周外科治療
歯周病が進行し歯周ポケットが深いと、スケーリングやルートプレーニング(歯や歯周ポケットの歯石や歯垢を取り除く処置)では汚れが取り切れません。
歯周外科治療(フラップ手術)では、麻酔をして歯茎を切開し、歯の根が見える状態にして歯石や不良肉芽(悪くなった歯茎)を除去します。
歯周補綴(ほてつ)治療
歯周病が進行すると骨が溶かされ、歯を支えきれなくなってグラグラしたり、噛む力に耐えられなくなったりします。
歯周補綴治療は、重度歯周病にかかった歯に被せ物(ブリッジ)を装着して隣の歯とつなげ、歯を安定させることでかみ合わせや見た目の改善をはかる治療法です。
抜歯
歯周病治療は「どうすればできるだけ多くの歯を残せるか」ということを考えて進められますが、さまざまな方法で治療しても改善が難しい歯は、抜歯した方がいいことがあります。
治療が難しい歯を残しておくと歯周病菌の住処となってしまい、その周囲の残せる歯や全身にまで悪影響が及んでしまう可能性があるためです。
歯周病は手遅れにさせないことが大切な理由
歯周病は、「手遅れにさせないこと」が非常に重要です。なんらかの理由があって歯周病治療を躊躇っている方も、一度相談だけでもしてみてください。
歯周病は歯を失う原因第1位
歯を失う原因というと虫歯を想像する方が多いでしょう。
しかし実は、歯を失う原因の第1位は歯周病です。歯周病は年齢を重ねるにつれてかかる人が多くなり、また、年齢とともに進行していきます。
加齢は歯周病の直接的な原因ではありませんが、年を取ると免疫力が低下して歯周病にかかりやすくなるため、しっかりとプラークコントロールを行うことが大切です。
歯周病で歯を失うと治療が難しくなる
重度歯周病で歯を失った場合、「歯が移動している、グラグラしている」「口腔内に歯周病菌が多い」といった理由から、治療の難易度が高くなります。
例えば、失った歯の補綴治療にインプラント治療がありますが、骨が多く欠損していると治療が難しくなり、インプラント周囲炎のリスクも高いです。
歯周病の進行を止め手遅れにさせないためにも歯科検診を
歯周病を手遅れにさせないためには、日々の丁寧な歯磨きに加えて、定期的な歯科検診を受けることが大切です。
毎日自宅でしっかり歯磨きをしても、歯垢や汚れがどうしても取り切れずに残ってしまうことがあります。また、歯垢が固くなった歯石は歯磨きでは除去できず、歯科医院での歯石取りが必要です。
初期の歯周病は自覚症状がなく、気づかないうちに進行していきます。お口の健康を保つためにも、歯科検診を受けましょう。
まとめ
歯周病が悪化し、重度歯周病にまで進行すると手遅れとなってしまい、抜歯しなければならなくなることがあります。
しかし、歯周病はかなり進行するまで目立った自覚症状がないことも多く、気づいた頃にはかなり悪化してしまっているというケースも少なくありません。
歯周病を手遅れにさせないためにも、定期的な歯科検診を受けるようにしましょう。
小嶋デンタルクリニックでは、病状の進行度や症状の程度に合わせた歯周病治療を行っています。
「歯周病でもう手遅れかもしれない」と思っていても、しっかり治療すればまだ歯を残すことができるかもしれません。まずは一度お気軽にご相談ください。