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歯肉炎はどんな治療で治る?歯周病との違いと原因・予防についても解説

2023/06/09

日本人が歯を失う原因の第1位は「歯周病」です。

成人の約8割がこの病気にかかっているとされ、国民病とも呼ばれています。

ところが、身近にありながら軽視されやすい病気でもあります。

また似たような病名も多いため、わかりにくいのもやっかいです。

そこで本記事では、基本となる「歯肉炎」と「歯周病」の違いについてご説明していきます。


歯肉炎とは

歯肉炎とは、歯の周囲にある歯ぐき(歯肉)が炎症をおこした状態を指します。

軽度の炎症なので、口腔内の清掃(プラークコントロール)により症状を緩和することができる状態です。

もし適切なケアをしなければ、歯肉炎が悪化して歯周病へと進行します。

つまり、歯肉炎とは歯周病の前段階なのです。

健康な歯ぐきは歯肉が薄いピンク色をして引き締まっており、歯と歯肉との間に白いカス(プラーク・歯垢)はなく、歯肉の形はきれいな三角形をしています。

歯と歯ぐきにある歯周ポケットは1〜2ミリです。

ところがプラークコントロールがうまくいかなくなると、歯周ポケットが2〜3ミリ程度まで開き、歯ぐきが赤みを帯びてしまいます。

歯磨きをすると時々出血がみられますが、痛みもなく、自覚症状はほとんどありません。

そのため歯科医師の検診等で指摘され、はじめて歯肉炎になっていることに気づくこともあります。      


歯肉炎の原因

歯肉炎の大きな原因は、歯垢(プラーク)の蓄積です。

十分な歯磨きができないとプラークが蓄積し、プラーク内に潜む歯周病菌が発する毒素が歯ぐきを刺激するため、腫れや出血を引き起こします。

それ以外にも、唾液の分泌量が低下するドライマウスも原因のひとつです。

唾液は口腔内を洗浄し、殺菌をうながす役割があります。

ストレスや加齢、過度な飲酒などの原因により、ドライマウスになると口腔内に歯周病菌が繁殖しやすくなって歯肉炎になりやすいです。

また女性ホルモンを好んで増殖する特殊な歯周病菌も存在するため、ホルモンが増える思春期、生理前後、妊娠・出産期はとくに歯肉炎になりやすいタイミングです。

ほかにもビタミンの一種であるナイアシンが欠乏すると、口腔内の粘膜が炎症を起こしやすいことも指摘されています。


歯周病との違いは?

歯周病は歯肉炎がさらに悪化し、症状が進んだ状態をいいます。

歯周病は歯肉炎も含んだ表現であり「歯周病」という呼び方で一般に広く認知されています。

歯周病にはステージ1から4までの段階があり、ステージが上がれば上がるほど症状が悪化、歯を失うリスクも上昇するのです。

ステージ1は歯周炎になる前段階の「歯肉炎」、ステージ2は歯肉炎によって歯周ポケットが広がります。

炎症がさらに悪化した「軽度歯周炎」、ステージ3は「中度歯周炎」、ステージ4は歯槽骨が溶けて歯が大きくぐらつき、歯を失うリスクがもっとも高い「重度歯周炎」になります。


軽度歯周炎との違いは?

歯肉炎は歯と歯ぐきとの間にある歯周ポケットの開きが約2〜3ミリで、歯周病菌が歯と歯ぐきとの間に入り込んでいる状態です。

歯ぐきに炎症が起きていますが、痛みや出血はほとんどみられません。

ところが軽度歯周炎に進行すると、歯周ポケットが3〜5ミリまで広がり、歯周ポケットのなかに歯垢が蓄積していきます。

歯を支える大事な歯槽骨も溶けはじめており、歯磨きで出血する、歯がぐらついているような感覚があるなど、より症状が悪化しやすいです。

歯肉炎は歯ぐきの炎症の段階、軽度歯周炎は歯肉炎からさらに症状がすすみ、歯ぐきだけではなく歯槽骨まで侵されている状態になります。


歯肉炎の症状

歯肉炎は歯ぐきに歯垢(プラーク)がたまり、歯周病菌が発生させた毒素や酵素により歯ぐきが出血・炎症を起こします。

健康な歯であれば歯と歯ぐきの間にある歯周ポケットは1〜2ミリとほとんど開きがありませんが、歯肉炎になると2〜3ミリまで広がるでしょう。

また健康な歯ぐきは薄いピンク色ですが、炎症を起こすと赤く腫れてみえます。

歯ぐきの炎症により、りんごなど固い食べ物を噛む、歯磨き、フロスで歯間の掃除をするなどの刺激を受けると出血の症状がみられます。

健康な歯であれば、少しの刺激でも出血することはありません。

出血を確認したら、歯肉炎を疑ったほうがいいでしょう。


歯周病を放置するとどうなる?

歯肉炎が悪化すると歯周病へと進行してしまいますが、歯肉炎の段階ではほとんど症状がありません。

そのため、口臭がきつい・歯ぐきから膿が出る・歯ぐきが下がって歯が長く見えるなどの症状が出たときには、病気がかなり悪化しています。

もし歯周病を放置してしまうと、どのようなリスクが発生するのでしょうか?

きちんと認識することで、歯周病リスクを回避しましょう。

歯周病を悪化させる

歯肉炎や歯周病は「サイレント・ディスイーズ(静かな病気)」と言われ、自覚症状がないのが大きな特徴です。

歯ぐきからの出血や歯のぐらつき、口の中のねばつきなどの症状を放置すると、どんどん病気が進行します。

歯周病は軽度歯周病・中度歯周病・重度歯周病の段階を踏んで悪化し、最終的には歯を失うという取り返しのつかない結果につながる危険性もあるほどです。

重度歯周病になる前に、適切な治療を受ける必要があります。

軽度歯周病の段階であれば、歯科医院で歯垢や歯石を除去してもらってください。

ブラッシング指導で症状は改善しますので、早期発見・早期治療が大切です。

早産のリスクを高めることがある

歯周病が悪化すると、早産のリスクが高まることがわかっています。

歯周病から発生する炎症物質が血液にのって全身に影響をあたえますが、子宮も例外ではありません。

炎症物質が子宮の収縮をうながすため、早産や低体重児の出産リスクが高まります。

また妊娠中は女性ホルモンが多量に分泌されていますが、女性ホルモンを好む一部の歯周病菌にとって、かなり快適な口腔環境になっています。

つわり時期は歯磨きができないケースもあるため、とくに歯周病が発生しやすいタイミングです。

つわりがおさまる4〜5か月頃に歯科検診を受け、必要であれば歯周病対策をおこなうことで安心できます。

骨粗しょう症のリスクを高めることがある

人の体のなかでは、古い骨は壊され新しい骨が形成される「骨代謝」がおこなわれています。

ところが閉経後、大幅に女性ホルモンが減少すると、骨代謝のバランスが崩れてしまうのです。

新しい骨が作られるスピードよりも古い骨が壊れるスピードのほうが速くなり、骨の内部がスカスカになります。

この状態を骨粗鬆症と呼びますが、歯周病とも無関係ではありません。

歯周病によって作られる炎症物質が血液にのって体内に流れると、骨の代謝に悪影響を与えます。

また、歯を支える歯槽骨も骨粗鬆症によってもろくなり、歯周病がさらに悪化する可能性があります。

脳疾患・心疾患・肺炎などを引き起こすことがある

歯周病菌から発生する炎症物質や毒素は、血管をとおして全身に広がり、さまざまな病気を引き起こして悪化させることがあります。

たとえば歯周病菌から発生した炎症物質が血管に入ると、血管の壁を刺激することにより血管でも慢性的な炎症が起こります。

そこから血管におかゆ状の沈着物が発生し、それが動脈硬化へと進行する仕組みです。

心臓へと血液を送る血管が細くなれば狭心症を引き起こしますし、血管が詰まれば心筋梗塞となります。

脳内も同じで、脳の血管が詰まれば脳梗塞に、そして口腔内の歯周病菌が肺へと侵入することで、肺炎が起こるリスクもアップします。


歯肉炎の治療法

歯肉炎や歯周病は早期発見・早期治療で症状を改善できます。

重度歯周病になり自分の歯が抜け落ちてしまうと治療はできませんが、その段階まで至っていないのであれば治療可能です。

歯肉炎や歯周病の治療にはどのような種類があるのか、基本的な検査や歯垢除去からチェックしていきましょう。

①検査

歯肉炎や歯周病を発症しているかどうか、また発症していればどの段階にあるのかをきちんと把握しなければなりません。

そのため、歯周ポケットの深さを調べる「プロービング検査」や、骨の内部状況を調べる「レントゲン検査」を実施します。

さらに、プラークの付着状況を確認する検査などもおこなわれます。

プラーク付着検査は、専用の染色液を使い、プラークが付着した部分だけ色がつく仕組みです。

目印をつけることで、しっかり歯垢や歯石を取り除けます。

②歯垢除去  

歯肉炎や歯周病の大きな原因として、歯垢(プラーク)の付着があります。

歯垢は白いカスのようなねばねばとした物質で、自宅でのブラッシングである程度除去可能です。

しかし、歯垢が除去できずに石灰化すると、歯石と呼ばれる状態になって歯磨きでは取り切れません。

歯垢や歯石を除去するためには「超音波スケーラー」や「キュレットスケーラー」などの器具を使い、歯周ポケット入口に蓄積した歯垢や歯石を取り除いていきます。

歯周ポケットの奥に入り込んだ歯石は、ルートプレーニングで施術します。

③ブラッシング指導

歯肉炎や歯周病を防ぐためには、日ごろから歯垢をしっかり除去できる正しい歯磨きをおこなうのが重要です。

歯ブラシの毛先が歯垢に届いていなければ、口腔内の洗浄(プラークコントロール)ができません。

そのため、歯や歯ぐきのどの部分を磨けばいいのか、歯ブラシの動かし方、力の入れ具合、歯磨きにかける時間などを指導します。

歯垢はねばねばした状態ですので、2〜3回磨いた程度では、歯垢を除去できません。

同じ個所を10〜20回、さらに一度の歯磨きを5分程度続けることが重要です。

④外科治療

もし検査・歯垢除去・ブラッシング指導でも症状が改善しなかった場合、外科治療(手術など)をおこないます。

歯を支える歯槽骨が溶け、歯周ポケットが深くなっている場合は「フラップオペレーション」が施術されます。

歯ぐきを開いて、歯の根元についた歯石を徹底的に除去する流れです。

同時に歯周組織を再生させるため、トラフェルミンやエムドゲインなどの特殊な薬剤を使い歯槽骨や歯根膜の再生を促す治療が行われることもあります。

外科治療で症状が改善されれば、定期的なメンテナンスの段階へと移行します。


歯肉炎の治療期間

歯肉炎は歯周病の初期段階です。

まだ歯槽骨も溶けていませんし、歯肉に炎症が起きただけの状態なので、適切な治療をすれば約2〜3週間で症状は改善されていきます。

治療のメインは歯石や歯垢を除去するスケーリング、さらにブラッシング指導もおこなわれるので安心です。

いくら歯石をきれいに取り去っても、歯磨きが不十分ではまた歯肉炎の状態に戻ってしまいます。

そのため、スケーリングとブラッシング指導は欠かせません。

歯肉炎の治療は短期間ですみ、通院回数も少なくてすみますので、できるだけ歯肉炎の段階で治療を完了させましょう。


歯肉炎の予防方法

歯肉炎は放置すると症状が進行し、歯周病へと悪化していきます。

歯肉炎は歯周病は自然治癒しませんので、まずは歯肉炎にならないように日ごろからできる対策を実施しましょう。

歯肉炎対策といっても、高額な費用がかかる大がかりなものではありません。

代表的な予防方法を紹介しますので、ぜひ参考にしてください。

口腔ケアをする

歯肉炎を予防するには、歯の表面や歯と歯ぐきとの間に歯垢を残さないことが重要です。

歯垢はネバネバした歯周病菌のかたまりですが、歯石と違いしっかり磨くことで除去できます。

歯と歯ぐきとの間に45°程度の角度をつけて歯ブラシをあて、小刻みに動かしながら1本の歯につき約10〜20回程度ブラッシングします。

歯と歯のすき間にも歯垢がたまっていますので、デンタルフロスや歯間ブラシを使って汚れを除去しましょう。

舌の上にも歯周病菌や虫歯菌などが繁殖していますので、舌専用のクリーナーを使うのも効果的です。

免疫を高める

口腔内にはたくさんの歯周病菌や虫歯菌が存在していますが、免疫力があればこれら細菌の増殖を抑制できます。

しかし、免疫力が低下するとこれらの細菌が力をつけて、口腔内でどんどん増えてしまうのです。

免疫力を低下させる原因は、以下が当てはまります。

  • 疲労やストレス、睡眠不足
  • 運動不足
  • 不規則な生活習慣
  • 偏食などによる栄養不足
  • 体の冷え

免疫力を高めるためには、規則正しい生活や十分な睡眠時間を確保しましょう。

そして、ビタミンやタンパク質など栄養バランスのとれた食事、適度な運動、ゆったりとお風呂につかる、ストレス発散法を見つけるなどの対策が有効です。

定期的な検診を受ける

適切な口腔ケアを心がけても、完璧なブラッシングができるとは限りません。

そのため、定期的な検診を受けることが歯肉炎予防に有効です。

プロの目で見れば、歯ぐきの腫れや歯垢、歯石の有無、磨き残しの部位、口腔内の状況、かみ合わせなどを的確に指摘してくれます。

歯垢や歯石があれば除去してくれますし、磨き残しの多い部分に関してはブラッシング指導も実施してくれます。

年に1〜2回の頻度で定期的に通院し、口腔内のチェックをしてもらうと安心です。

歯肉炎や歯周病のもっとも効果的な対策は、早期発見と早期治療です。

信頼できる歯科医院を見つけて、口腔内の状況をしっかりチェックしてもらいましょう。


まとめ

歯肉炎は歯垢除去をして治療をして、もし症状が改善しなかった場合、外科治療(手術など)をおこないます。

小嶋デンタルクリニック では、患者一人一人に合ったオーダーメイド治療を実施中です。

カウンセリングから検査、治療計画までスムーズに案内します。

極力専門用語を使わずわかりやすい説明を心がけており、どなたでも気軽に来院してください。

最新の治療機器と実績あるスタッフがお待ちしております。